電通も博報堂も営業って呼ばなくなったの?なんで??

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ビジネスプロデューサー、ビジネスデザイナー・・かつての営業が、そんな名称に変わってしまいました。
で、何が変わったの?なんで?といった疑問にお答えします。

広告会社の営業って?

世間一般の営業の違い

厳密な定義があるわけではありませんが、一般的に、
・自社の商品を紹介して相手に買ってもらう仕事
・コミュニケーション能力が必要
・スケジュール管理ができる、人当たりが良い人が向いている
・ストレス耐性がない人は向いていない
仕事のようです。

・・上記は、一番上を除きどんな仕事でも共通だと思いますが。。

広告会社の営業に翻訳すると、
・自社の商品=マーケティングやコミュニケーション・メディアといったアウトプットの相談に乗り、提案し、お買い上げいただく仕事
・コミュニケーション能力、特に、相手の求めているふわふわしたことを聞き出し、ふわふわした内容から本当に言いたいことを導出し、それを社内外スタッフに対して説明する能力が必要。
・スケジュール管理ができない人は消えて欲しい。人当たりの良さは得意先から気に入られやすい=悩みを相談してもらいやすいので望ましい。
・仕切り方が悪いと得意先とスタッフの板挟みになったり、頭のおかしい得意先から無茶なオーダーを繰り返されたりと、ストレス耐性はある程度必要。ただし、全てに付き合う必要はない。

といった感じでしょうか。
自社の商品が広いので、やりがいはあると思います。
得意先⇄営業⇄スタッフの連絡経路が普通ですが、極論、優秀すぎる営業は営業だけで完結しています。

【電通】2018年:営業局→ビジネスプロデュース局へ呼称変更

Dentsu Integrated Report 2018より引用

多様な課題を多様な形で解決するビジネスプロデューサーへ2018年、電通の営業局はビジネスプロデュース局へと名称を変更しました。
これは、企業の要望にお応えすることや広告コミュニケーション領域で生み出せる解決策にとどまることなく、真の成果、すなわち商品・サービスや広告の受け手である消費者や社会のニーズを満たした結果として得られる顧客企業のビジネスの成功にコミットしていくという私達の意思表明でもあります。

〜中略〜

顧客や取引先企業の多様な課題を多様な形で解決するビジネスプロデューサーとして成長するため、私達は挑戦を続けていきます。

つまり、何?

“今までの”広告会社の営業では、コミュニケーション領域で商品販売という意味合いが強かったです。
“これからの”広告会社の営業は、得意先のビジネス成長のためにどの領域にも手を出します!だから、ビジネスを冠する名前に変えます。

程度の宣言です。
確かに、マーケティングや事業領域のコミュニケーションのみならず、経営戦略や事業/商品開発(コンセプトのみならず失敗すれば痛みを伴うような技術開発まで含む)にも手を出しているので、従来の営業、ではないことは確かです。

【博報堂】2019年:営業局→ビジネスデザイン局へ呼称変更

博報堂の宣言

次期中期経営計画(2019-2023)において、博報堂グループはマーケティング領域に留まらない様々な領域で、新たなビジネス機会の創出を目指す「全社マーケットデザインビジネスの推進」を掲げる。
〜略〜
職種や組織に限定するのではなく、全社員が取り組むべきものとする。

※マーケットデザイン:マーケティング領域とイノベーション領域を両輪にして、新たなビジネス機会の発見と実現を推進するもの

そのため、2019年度の組織改正では、これまでのカンパニーからマーケットデザインビジネスカンパニーへの進化を図るとともに、営業局の機能を“得意先における既存のマーケティングビジネスに留まらない新たなビジネス機会の発見とビジネスの創造を行うもの”と拡張し、呼称をビジネスデザイン局とする。

だから、何?

“今までの”広告会社の営業では、既存のマーケティングビジネスの中での活動という意味合いが強かったそうです。
“これからの”広告会社の営業は、得意先の新規ビジネスの機会発見と創造にも寄与します!だから、ビジネスを冠する名前に変えます。

新しい収益源を見つけに行くよ!みたいな宣言にも受け取れます。
&これまでも新規マーケティングビジネスにも手を出していたことになっていたはずなのですが・・本当の意味で、人材や資本の投資にも手を出すのかもしれません。

(本音と建前)なんで”営業”じゃなくなるの?

建前

言っている内容は電通と博報堂でほとんど変わりません。
みんなのビジネスが変化しているけど、なんでも対応できるよ

ただそれだけです。これまでの営業であっても、優秀な営業であれば様々な視点からビジネスパートナーでしたし、ポンコツ営業は名称が変わったところでポンコツのままでしょう・・。

一方で、言っている内容は変わりませんが、向いている方向が全く異なります。

これまでパートナー主義と生活者発想を標榜し、どちらかといえば生活者を押してきた博報堂にしては珍しく、組織としてパートナー:得意先に向き合っています。
一方の電通はどちらかといえばfor the clientの意識が強かった企業ですが、PDM(People Driven Marketing)を打ち出して以降、生活者側を主軸にする流れにいます。労基に刺されて以降、また世間の流れを汲んで、”はい喜んで”の精神はなりを潜めており、そちら側に寄るしか術がなくなっている、ということでもあります。

本音

時流に合わせたものですが、見ている時流が2つあると言われています。
が、うち1つは就活生受けが悪い、といった理由の1つかもしれませんが極めて弱いものなので、そちらは割愛します。本質は、36協定と絡む、残業時間(時間外手当)についてです。

前提ですが、電通は部長職未満、博報堂は入社4年目の夏まで、残業代が支給されます。
それ以上のレイヤーになると裁量労働となり、給与の中にみなし残業時間分のお金がはいってくることになります。
基本的に、みなし残業時間<実際の残業時間なので、裁量労働となった時に実質的な時給が下がりやすいのはこのためです。会社としてはみなし残業時間の方が人件費が下がり嬉しい話です。
広告会社は仕事自体を趣味だと感じる人も一定数おり、裁量労働の方が時間に縛られず働きやすいという声があるのも事実です。ただし、もちろん全員がそう思っているわけでもなく、多数派かどうかもどうでもいい話です。

問題となるのは、裁量労働に移行したところで仕事をしなくなる/仕事がなくなるわけではなく、実質的な残業時間分の給与が下がることにあり、会社としては、裁量労働とすることでパフォーマンスは変わらずコストを下げられることにあります。

となれば、会社としてはなんとかして裁量労働とする口実が欲しいわけです。
とりわけ、人数の多い営業職をなんとかできれば収益性幅が大きいわけです。

ここで、営業職は裁量労働のようで裁量労働ではない側面もあります。
得意先に直接的に向き合うため、自分の仕事が社外の相手に左右されてしまい、コントロールできないためです。
実際、”営業 時間外手当”などで検索すると、みなし残業時間を超えたものは請求できます、といった社会保険労務士のコラムが散見されます。

というわけで、営業のままでは裁量労働の導入は難しいところがあるわけです。
そこで、抜け道と言いますか、専門性を付与することで営業からの脱却を試みます。
その道こそ、「企画業務型裁量労働制」です。
これは、労働者側の、自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性をもって働きたいという意識の高まりから、創造性豊かな人材が、その能力を存分に発揮しうるよう自律的で自由度の高いフレキシブルな働き方の実現に向け、労働時間管理のあり方を見直す制度です。

つまり、営業ではなくビジネスをプロデュースなりデザインなりするならそれは企画業務なので裁量労働で大丈夫、といった論理です。

・・実質的な職務内容も、変わっていくと良いのですが・・・。

まとめ

営業という名称は、電通ではビジネスプロデュース、博報堂ではビジネスデザインに変わった。
変えた理由の建前は、旧来の営業で対応できない領域まで広告会社の役割が広がったから。
変えた理由の本音は、裁量労働にするためには営業という名前のままではいられないから。